これまで施術を行うなかでしばしば「整体って何ですか」と訊かれてきた。
私自身も「整体」という言葉の概念が人によって、あるいは施術所(お店や治療院など)によってまちまちなのを見たり聞いたりしてきたので、この業界でない方が整体の意味がよくわからないというのは理解できる。
広辞苑によると、整体とは「手技によって骨格のゆがみや異常を整え、健康増進をはかる民間療法」とある。要するに、読んで字のごとく「体を整える」ということ。
ちなみに「整腸」とは腸を整えることだが、整腸剤などの薬を用いることが多いのに対して「整体」は「手技によって」行われるもので、薬やメスを用いるものは該当しないということになる。
広辞苑の解説には「手技によって」と書かれてあるが、私の経験から、非観血的な道具(特殊なベッドや工具のようなもの)を用いた場合も整体と呼ばれることがあるように思う。つまり整体とは「手技や非観血的道具を用いて体を整えること」とまとめてもいいだろう。
【整体という言葉が理解しにくくなっている理由】
「体を整える」という本来単純な意味の「整体」が、人によってあるいは施術所によってまちまちで分かりづらくなっているのは何故か。その原因の一つは、目的と手段が混同されているからである。
「整体」はその意味から「治療」のように目的として使われるべき言葉である。「治療」は薬や観血的処置をも含むため抽象度としては「整体」よりも高い(つまり治療のなかに整体も含まれている)のだが、大きく分けるならば、体を整える「整体」はやはり目的に分類すべきだろう。
いっぽうで、マッサージや指圧やストレッチなどは手技であり、目的に到達するための手段である。
「私の症状にはマッサージがいいのか、ストレッチがいいのか、整体がいいのかわからない」とか、「これまでストレッチもマッサージも整体も受けてきた」と言う人がとても多く、またお店や施術所の看板も同様で、それらはいつの間にか同じラインに並べられるようになってしまっている。だからわかりにくいのである。
ただ、言葉というのは常に変化するものでもある。例えば「やばい」が「危険」とか「まずい状態」などネガティブな意味だったのが、「おいしい」や「すごく良い」という意味に変わってきたのは有名である。また、「役不足」や「情けは人の為ならず」も誤った使い方が定着していることで知られている。
「整体」という言葉も、マッサージの代替として使われることも散見されるし、揉みほぐしやストレッチが混ざった施術を指すことも多い。カイロプラクティックの看板の中に「整体」と書かれていることもあるし、鍼灸の看板のなかのメニューに書かれていることもある。特に広告や看板を見る限り現在では「整体」という言葉の使われ方は「手段」を示す言葉として定着してきていると言わざるを得ない。
このような理由から坂乃下整骨院でもメニューに「整体」という言葉を用いている。